2016年04月06日
裏側
レジに並んでいると、背後から「おっさん! おい、おっさんよ!」というイライラした声が聞こえた。そっと後ろを窺うと、私のすぐ後にはうつろな目をした男の人がお弁当のようなものを一つだけ持ってぼぅっと立っている。声の主はその後ろにいるガタイのいい男性だろう。「おっさん、聞こえねぇのかよ、こっちが先に並んでんだよ!」とさらに言われて、うつろな目の人はやっと列から離れたようだった。
「ったくようぅ」とつぶやきながら、鼻息も荒く、ガタイのいい男性がすぐ後ろに来たのがわかって緊張する。きっと急いでいるに違いない。私のかごの中身を見て、なんでそんなに買うんだよとか言いだすんじゃないか。それなら順番を譲ったっていいけれどと思いながら見ると、その男の人のかごにも結構な商品が入っている。
わたしの目の前で今まさに会計をしてもらっているのは、ジム帰りのようなはつらつとして見える年配のご婦人だったけれど、お財布からお金を出すことに夢中でレジの人の言葉が全く耳に入っていない。「お箸はおつけしますか」「レジ袋はご入り用ですか」「クーポン券はお持ちですか?」を、それぞれ一回目は華麗に聞き逃し、二回目で「は?」と訊きかえし、三回目でやっと返事をする、ということを丁寧に繰り返している。今にも後ろの男が「ちゃんと聞いてろよ!」とでも言いだすんじゃないかとひやひやした。
乱暴な言葉を発することに要らないエネルギーを使っているように思える人にときどき出会う。なにか、あるんだろうなぁと思う。でも、それよりもっといやなのは、表だけ見たらとても使いそうもない言葉を陰では使える人だ。……なんて、もともと付き合いもない人のことを思い出してどうする。
さて、私の番になってレジの女の子はまた同じことを訊く。「デザートのスプーンはおつけしますか」「レジ袋は…」「クーポン券は…」 できるだけ速やかかつ明快に答え、つつがなく会計が終わるとほっとする。やっと男の人の番。レジの女の子はまた同じことを訊くのだが、その人は「いらん!」「いる!」「ねぇ!」とものすごい速さで答えていた。もはや苛立っているというより恥ずかしげにも聞こえて、結局は不器用なだけなんだろうな。と、思うことにした。
「ったくようぅ」とつぶやきながら、鼻息も荒く、ガタイのいい男性がすぐ後ろに来たのがわかって緊張する。きっと急いでいるに違いない。私のかごの中身を見て、なんでそんなに買うんだよとか言いだすんじゃないか。それなら順番を譲ったっていいけれどと思いながら見ると、その男の人のかごにも結構な商品が入っている。
わたしの目の前で今まさに会計をしてもらっているのは、ジム帰りのようなはつらつとして見える年配のご婦人だったけれど、お財布からお金を出すことに夢中でレジの人の言葉が全く耳に入っていない。「お箸はおつけしますか」「レジ袋はご入り用ですか」「クーポン券はお持ちですか?」を、それぞれ一回目は華麗に聞き逃し、二回目で「は?」と訊きかえし、三回目でやっと返事をする、ということを丁寧に繰り返している。今にも後ろの男が「ちゃんと聞いてろよ!」とでも言いだすんじゃないかとひやひやした。
乱暴な言葉を発することに要らないエネルギーを使っているように思える人にときどき出会う。なにか、あるんだろうなぁと思う。でも、それよりもっといやなのは、表だけ見たらとても使いそうもない言葉を陰では使える人だ。……なんて、もともと付き合いもない人のことを思い出してどうする。
さて、私の番になってレジの女の子はまた同じことを訊く。「デザートのスプーンはおつけしますか」「レジ袋は…」「クーポン券は…」 できるだけ速やかかつ明快に答え、つつがなく会計が終わるとほっとする。やっと男の人の番。レジの女の子はまた同じことを訊くのだが、その人は「いらん!」「いる!」「ねぇ!」とものすごい速さで答えていた。もはや苛立っているというより恥ずかしげにも聞こえて、結局は不器用なだけなんだろうな。と、思うことにした。
Posted by would at 18:41
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